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後楽園球場の売り子   [◆徒然なるままに 「自分らしく生きる」]

 今から40年ほど前、後楽園球場での話です。9月の巨人阪神戦。優勝をかけた戦いで有ろうが無かろうが、巨人阪神戦はいつも大盛り上がりです。

 彼は不届き者でただでその一戦を見るという目的の為、球場の売り子のバイトをします。

 無料で試合が見られてしかもお金をもらえるという素晴らしい発想です。

 連絡通りに当日後楽園球場に向かいます。

 球場の裏口から入るとアルバイトが数十人集まっていました。

 何を売るのかは事前に知らされておらず、当日言いわたされるのですが、どうせ売るなら絶対に“生ビール”です。

 涼しくなってきたとは言え、野球観戦には欠かせないアイテム(?)で、贔屓のチームが点を取れば気分よくビールを飲み、点を取られれば悔しくてビールを飲む。

 いくら不純な動機のアルバイトでも、なるべく稼ぎたいのは当然のことです。

 ところが・・・彼が配置されたのは“アイスクリーム”だったのです。

 夏が過ぎ10月も間近の涼しい時期に“アイスクリーム”は売れないのは目に見えています。

 担当の人が「君は初めてで慣れてないからあまり売れないな」と彼に言います。

 “生ビール”ではなく“アイスリーム”を任された上に、「初心者は売れない」と決めつけられた彼は、「売ってやる!」と思ったそうです。

 “アイスクリーム”と決まった段階で、売ることについて、「無理」とか「ためだ」と考えず、「売れない」と言われても、諦めず「売れる」と思いスタンドに向かいます。

 明らかに不利な状況、ピンチに陥った時に、諦める人と諦めない人で差が出ます。

 たとえ結果が悪くても、諦めないで精一杯取り組めば、その後の人生に活かせるものです。

 彼は、その日、売上トップ!

 彼は、スタンド(バックネット裏、内野席、外野席)と、巨人が攻撃している時と阪神が攻撃している時でも売り方を変えたと言っていました。

 そしてトップになったのに、その日で後楽園球場の売り子を辞めます。

 理由は「初めてやって1番になったから」だそうです。

 そのアルバイトから得られるものは無いと思ったからだと思います。

 ただ、残念なことは全く試合を見られなかったことのようです。


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